2019年駒場祭UTVC講演会 実施報告

去る11月24日(日)に駒場祭にてUTVC主催で「被災地に今とこれから~災害時に現場では何が起こっているのか~」と題して講演会を行いました。


<概要>
2011年の東日本大震災、さらに昨今の台風被害等が起こる中で被害を防ぐにはどのような手段が有効か。そして現在数多の情報が行き交う社会において正しく備えて、災後に復旧・復興していく上で大切なこととは何か。
こうした問題意識から今回は現場で働かれる方や災害対応に関わられた方、そして報道機関の方をお招きして、そのご本人の口から様々な専門的な視点や現場の”リアル”を伺える講演会を企画しました。
コンテンツとして基調講演とパネルディスカッションの2本立てで行いました。


<内容>
1.基調講演
基調講演では弊団体の顧問も務める米村滋人教授から「防災・減災と災害復興の課題 ~次の災害への事前対応の重要性~」というテーマでお話いただきました。


○防災対策と「想定外」 
・台風被害をはじめ近年は毎年自然被害が起こる
→防ぐには災害の個別性に応じた対応が必要
⇒ハザードマップ等の「被害想定」によらない機動性が求められる


○災害復興の課題(東日本大震災から)
・復興計画について住民の合意が形成できない
・新市街地の整備に時間がかかり、若年層が流出してしまう
・対応策の違いでコミュニティが分断される
など
○最近注目されている「事前復興」
・災害の記憶をどう生かすか(この前もあった、では進まない)
・予想される課題に事前に対応
例)普段から民間事業者と連携など


2.パネルディスカッション
続くパネルディスカッションでは大船渡市役所の佐藤様、総務省(現 内閣官房番号室)の笹野様、NHKプロデューサーの大野様、UTVC3年の藤田の4名を登壇者として、米村教授にモデレーターを務めていただきながら進行しました。


登壇者の自己紹介に引き続き、佐藤様より震災から現在までの大船渡の歩みについて紹介していただきました。
ここで提示された4つの大事にしているものは以下のものでした。
①視点(外の視点で想定外を想定内へ)
②裁量を設ける・出来事を受容する
③セクターを越えた取り組み(達成したいことをできること/できないことに分ける)
④承継(期間付きで土地を貸し、将来の大人がまちを見直せる仕組みを作る)

今回のパネルディスカッションで扱ったテーマは
①震災から8年、どのような印象を持っているか
②情報の扱い方、災害への対応
③これまでの教訓をどのように活かすか
です。


印象について、未曾有の災害ということで各立場で無力感に苛まれた方が多い一方で、新たな仕事の仕方や自己実現の方法を模索される、といった前向きな捉え方もあったようです。


続く災害への対応については、行政の方からは各職員の方が対応にあたられる中での機能性の向上や発信の仕方についての言及がありました。笹野様からは「地域ごとではなく国全体をあげての対応が必要になる」といったお話を伺えました。
一方で現地で取材されていた大野様からは「制度と感情のずれ」「復興におけるスピード感と合意形成」といった問題提起を受けました。
そこで佐藤様の口から「復興の個別性」というキーワードが。
これは単にお金をつけることが復旧・復興ではなく、前例がない中で個々の事情に応じて対応することの重要性が浮き彫りになるということでした。



最後に今後考えていくこととして、「お金では埋められないことにどう対応していくかの模索」「ナラティブアプローチ(災害を全体としてではなく、1つ1つの物語を紡いでいくことで心に響く)をテレビで行いたい」があがりました。
災害からの学びとしてハード面よりむしろソフト面への言及が多かった中で、最後にモデレーターの米村教授は「行政やメディア等で立場は違えど『人として向き合うこと』が大事になる」というお言葉で締められました。


<まとめに変えて>
質疑応答では「具体的に情報源をどうするのか」という質問が。
これに対して


・(大船渡の経験として)被災直後情報を入手する手段が無かった
→Yahoo!と協定を結んで見合う技術・連携できる民間を探しているところ
・(現地で取材していく中で)命を守るということに関しては「何が正しいか」という考えは×
→逃げた人は複数の情報から集めている
例)テレビ、ラジオ、近所の人の声、マンホールから溢れ出る水
・「この情報は確実」と言うとそれが出るまで逃げない
→待ちの姿勢をやめる


といったお答えが伺えました。三者三様の見え方からのご指摘はどれも鋭く、また深く考えさせられるものとなりました。

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